■日独交流セミナーに参加して
第１章 序論
第２章 本論
第１節 交流のコツ
第２節 ドイツの現状
第３節 ドイツＹＨの現状
第４節 セミナーについて
11月26日オリエンテーション
11月26日ビーネフェルトＹＨ
11月27日第１回セミナー1
11月27日第１回セミナー2
11月27日第２回セミナー1
11月27日第２回セミナー2
11月27日ヒルデさん宅訪問
11月28日ビーネフェルトＹＨ見学
11月28日第３回セミナー
11月28日第４回セミナー
11月28日ドーン氏挨拶
11月28日デットモルド市長
11月29日ドレスデンＹＨ到着
11月30日第５回セミナー
11月30日日独討論会
11月30日バロック宝庫訪問
11月30日第６回セミナー
11月30日ドレスデンＹＨの見学
11月30日ドレスデンの歴史ツアー
12月01日バウツェンを訪問
12月01日ＹＨにて昼食
12月01日ゼンパーオペラ訪問
ドイツにおけるガイドの問題点
12月02日フラウエンシュタインＹＨ
12月02日ザイダＹＨへ
12月03日ザイフェン（Seiffen)訪問
12月03日グトゥルン・シルマン
第３章 結論
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11月28日ドーン氏挨拶
４回セミナーが終了した後、ドイツユースホステル協会のトップの一人であるドーン氏が現れました。ドーン氏は、挨拶も早々に大演説を始めました。現在のユースホステル運動の現状は、シルマンの唱えた理念を守ろうとする流れと、商業化を推進する流れに分かれていると。
例えば、オランダの例をとってみれば、ユースホステル運動の基本軸である会員制度を廃止することを決定しているとのこと。理念を守ろうとする諸国は、なんとドイツとオーストリアの二ヶ国のみとなっていると言うのです。しかも、そのうちのオーストリア協会は、政府の補助金が目当てであり、本気でシルマンの理念を守ろうとしているかどうか疑わしいと言っていました。
私は、2006年10月16日に「リヒャルト・シルマン伝」を自費出版した人間ですが、この現状が本当だとしたら、誠に恐ろしい状態になっていると思わざるをえません。ユースホステルからシルマンの理念が消えたらただの安宿です。ユースホステルがユースホステルたるゆえんは、シルマンの理念があるかどうかにかかっています。
そのシルマンの理念とは、ユースホステルはワンデルンシューレ（移動教室）のための施設であるということであり、しかも広い世代に開放された、多くの国籍の旅人に開放された教室であるという一点のみにあります。
シルマンは言いました。
「金や金の製品よりも高価なもの、精巧を極めた機械よりもさらに価値あるものは何であろう？ それは人間である！ これが真実であることを悟って、国も市町村も、毎年、何百万という経費を使ってあらゆる種類の学校を建て、これを維持している。それは体育館から水泳プール、運動場までも含んでいるのである。これは、時には収穫がないかも知れない。しかし、全て明日に望みをかけた種まきなのである」
シルマンは、民族の明日のために青少年教育を訴えました。それも金をかけない青少年教育の方法を。具体的には、野外に出て総合的に勉強するということです。そのためには宿が必要ですが、それについても、きわめて実現可能な現実を語りました。
学校に図書館や体育館が必要なら、仮眠施設があっても言いじゃないか。しかも仮眠施設は、今ある教室の再利用で充分。しかも、来た時よりも美しくして出て行ってもらう。そうすれば学校も泊めれば泊めるだけ美しくなります。そのようにシルマンは訴えたのです。これは画期的なアイデアでした。このアイデアがもとになって、「小学校のためのホステル」ができあがり、それを多くの世代の旅人に開放することで、青少年のホステル、つまりユースホステルになったのです。
ですから多くのユースホステルには、体験プログラムがあります。ワンデルンシューレ（移動教室）を基本としたユースホステル運動は、グリーンツーリズムとか、エコツーリズムとか、ソーシャルツーリズムとか、インタープリテーションプログラムという言葉が流行る前から、それらを実戦していました。ですから、グリーンツーリズムも、エコツーリズムも、インタープリテーションプログラムも、私には、ユースホステル運動の亜流にしか見えません。
そのユースホステル運動の理念を目先の金で放棄しようとしている動きが大勢を占めつつあるというドーン氏の報告は、聞き捨てならないものがありますが、ドイツユースホステル協会が、頑張っているかぎり、当分の間、大丈夫でしょう。何故ならば、世界中のユースホステルの何割かは、ドイツにあり、設備もマンパワーも大変充実しているからです。
例えば、ドレスデンで一般のホテルに泊まろうとした場合、最低でも百ユーロ（１万5000円）かかりますが、ドレスデンのユースホステルなら20〜30ユーロ（3000〜4500円）くらいで泊まれます。
サービスも一般ホテルを越えるレベルですから満室です。このような豪華ユースホステルが七百軒もドイツを網羅しているかぎり、ユースホステル運動が消えゆくことはないでしょう。ドイツのユースホステル運動は、理念にも忠実であるうえに、経営面でも盤石の態勢で勝負しています。 |