ドイツユースホステルの現状5

■日独交流セミナーに参加して

 第1章 序論
 第2章 本論
   第1節 交流のコツ
   第2節 ドイツの現状
   第3節 ドイツYHの現状
     ドイツYHの現状1
     ドイツYHの現状2
     ドイツYHの現状3
     ドイツYHの現状4
     ドイツYHの現状5

   第4節 セミナーについて

 第3章 結論

ドイツユースホステル協会の問題点

 最後に肝心なことを書きます。日独青少年指導者交流事業、およびFUJIプログラム中止の危機についてです。詳しいことは、後述するとして、ここではドイツの法律面とドイツ政府の助成金についてと、ドイツユースホステル協会の大雑把な方針について述べたいと思います。

 今まで、さんざんドイツユースホステル協会本部の巨大さを述べてきましたが、問題点もあります。それはドイツ政府とドイツの法律についてです。ドイツ政府は、青少年指導者交流事業やFUJIプログラムといった交流事業に全額補助を出しません。FUJIプログラムの例でみると4割が政府負担であり、後の6割がドイツユースホステル協会本部の負担になります。例えば、3000万の費用がかかる場合、1800万の自己負担となるわけで、かなりの出費を強いられているのが現状です。

 但し、これは何にでも言えることで、ユースホステルの建設一つにしても、3割の費用を政府が負担し、3割の費用を州が負担し、残りを州協会が負担するようになっています。

 その負担の割合についての理由も明快です。3割の費用を政府が負担するのは、ユースホステルは国際交流事業(国際交流行政は政府の管轄)の役割があると政府が認めているからであり、3割の費用を州が負担するのは、ユースホステルは教育事業の役割があると州(教育行政は州の管轄)が認めているからであり、残りはユースホステル運動を推進する州協会の受益者負担ということになります。つまり、ユースホステル協会側が全額負担することもないし、政府側が全額負担することもないのですね。このあたりが日本側の状況と全く違ってきています。

 こうなった場合、日独の政府間で国際交流事業をやろうとした場合、日本サイドは文部科学省の意向にそった国際交流事業を展開しようとするのに対し、ドイツ側は、ドイツ政府の他に、金を出そうとするドイツユースホステル協会本部の考え方も重要になってきているのです。そして、今まで日本重視の政策を続けてきたドイツユースホステル協会本部は、その政策を見直しつつあり、東欧諸国との交流に予算配分のポイントを大きくしつつあるのです。

 どうして、そのような状況になったのかは、私には良くわかりませんが、ドイツユースホステル協会本部のトップの方が、盛んにビジネスよりも哲学を大切にしなければならないと訴えていたところをみると、ドイツを除くヨーロッパのユースホステル運動が壊滅的な状況になっていることを心配しているようでした。オランダユースホステル協会が会員制度を廃止して、ビジネスホテルの道を進んだことを残念そうに訴えていました。

「日本ユースホステル協会も、ユースという文字をとってシニアホステルにしようという動きがあると聞いています」

 そんな馬鹿な。何を勘違いしているのだろう?

と思った私ですが、そういう勘違いがでるくらい差し迫っているのかもしれません。ですからドイツ協会としては、極東の国よりも、ヨーロッパを重視しつなければならない事情があるのかもしれません。

 ちなみにドイツユースホステル協会本部が、これまでに手がけてきた青少年交流事業は、日本・アメリカ・イスラエル・チェニジア・ナミビア・ボリビアであり、全てヨーロッパ以外の国々であり、歴史的にドイツと縁のある国々です。これらの国際交流事業の地図が、今後、大きく変わりつつあることは確かのようです。

 今後のドイツは、東欧やEUを中心とする国際交流事業に重点を置くことになり、何年も続いた日独青少年指導者交流事業は、その政策の煽りを受けることになるかもしれません。
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