ドイツユースホステルの現状4

■日独交流セミナーに参加して

 第1章 序論
 第2章 本論
   第1節 交流のコツ
   第2節 ドイツの現状
   第3節 ドイツYHの現状
     ドイツYHの現状1
     ドイツYHの現状2
     ドイツYHの現状3
     ドイツYHの現状4
     ドイツYHの現状5

   第4節 セミナーについて

 第3章 結論

第3節 ドイツユースホステル運動の現状

 さて、ここで気になるのが本部の財政です。
 ドイツユースホステル協会の財源は、いったいどのくらいあるのでしょうか?

 ドイツユースホステル協会の会員は190万人です。
 入会金はゼロですが、190万人分の年会費が収入として入ってきます。
 年会費は、18〜26歳までが13ユーロ(1950円/1ユーロ150円計算)。
 27歳以上が、21ユーロ(3150円/1ユーロ150円計算)となります。
 但し、入会すれば、家族なら誰でも会員証を使えますから、ドイツの会員証は日本の全て家族パスと同じ扱いになります。つまり、190万というドイツ側の発表する会員数は、実数に於いてはもっと多いということになります。

 また、17歳以下の子供たちの入会金は無いのかと言いますと、無いのです。と言っても入会無料というわけではありません。一人だけ入会するなら、13ユーロを払えばいいし、家族で入会するなら21ユーロを払えばいいのです。ただ、多くの家庭では、21ユーロを払って家族全員が会員になっています。その方が圧倒的にお得だからです。

 例えば、ドレスデンに泊まろうとすると百ユーロ以下のホテルを見つけるのに苦労しますが、ドレスデンのユースホステルでは、三十ユーロ以下で泊まれます、しかも施設は高級ホテル並みで、市内の代表的観光ポイントから歩いて15分の距離にあります。価格面で圧倒的に安いのです。

 それはともかく財源です。190万人の平均会費が、2700円だとしますと、会費は51億3000万。2500円なら47億5000万ということになります。これだけでも気の遠くなる額の会費収入を得ているわけですが、

「そのうちの本部の取り分は、いくらか?」

と聞きましたが、複雑な計算式があって一言では説明できないとのことでした。でもまあ日本式に4割が本部の取り分だとすれば、20億円前後の会費収入があるわけですから、その財源の豊富さには垂涎します。

 そのうえ本部は、前述の通り、マネージャー養成のための教育事業を行ったり、出版事業も行っています。旅行事業やアウトドア製品の取り扱いをする正社員六十名以上を擁する有限会社も持っています。

 さらにA4オールカラー44ページの会報を年間6回(190万部)も発行していて、しかも、その会報の半分のページがアウトドア製品の広告宣伝であることです。190万部の発行部数ともなると、広告費の収入はそうとうなものになると思われます。しかも、広告商品の大半は、ドイツユースホステル協会の関連会社が取り扱っている商品であり、その売り上げを考えたら気が遠くなってしまいます。

 しかも、取り扱っている商品は、ジャックウルフスキンやサレワといったヨーロッパの代表的なアウトドアブランドで、ザック、フリース、寝袋、登山器具、雨具、スノーシュー、スキー、旅行カバン、海外旅行グッズといったものから本や科学実験セットまで販売しています。もちろん、州協会やユースホステルのイベントや、本部が手がける旅行事業を含む各種の事業まで紹介されています。

 しかし、私たちを最も驚かせたのは、本部のオフィスでした。職員一人一人に、十二畳くらいの個室があったことです。半日勤務のパートタイマーの人にも個室がありました。土地代の安いデトモルトの田舎に本部があるからこそ可能なのでしょうが、そのせいか仕事が非常にはかどっている様子がわかります。つまり、各種の補助金申請や事業を能率的に捌ける空間を確保してあるのです。

 空間は力です。空間で時間が替えます。資料の整理も簡単にできますし、仕事の能率もあがります。また外部の雑音を遮断することによる仕事への集中度も違ってきます。能力主義を貫ける仕事場であれば、ドイツユースホステル協会本部のもっている空間力は、そこで働く人間の戦力を数倍にし、収益率をジャンジャンあげていくに違いありません。

 と、文章に書いてもピンと来ないかもしれませんから、一例をあげておきます。

 今回の青少年指導者交流事業で私は、数々の質問をドイツ側の担当者に投げかけました。すると、時々、ドイツ側の担当者の一人が隙をみて席を外すことに気がつきました。

「なぜだろう?」

と不審に思った私は、私もこっそりトイレに行くふりをして席をはずして廊下に出てみると、会議室の近くの部屋で、何人かの部下と、盛んにインターネットで調べ物をしているのです。その調べ物が、私たち日本側の質問に対する解答であることは、その後、ドイツ側担当者が大量のデーターを私たちに提示することによって、即座に理解できました。隣室に、資料とインターネットの準備して待ちかまえる。こういう作業ができるのが、ドイツユースホステル協会本部のもつ空間力とマンパワーなのです。

 そのくせ彼らの省力化も徹底しています。よくある「歓迎、日本ユースホステル協会■■様」といった看板はなく、その代わりに玄関に液晶モニターがあり、その画面に「歓迎、■■様」という文字が写されています。
このサイトに関するお問い合わせは、北軽井沢ブルーベリーYGHの佐藤まで御連絡ください。

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