ドイツユースホステルの現状3

■日独交流セミナーに参加して

 第1章 序論
 第2章 本論
   第1節 交流のコツ
   第2節 ドイツの現状
   第3節 ドイツYHの現状
     ドイツYHの現状1
     ドイツYHの現状2
     ドイツYHの現状3
     ドイツYHの現状4
     ドイツYHの現状5

   第4節 セミナーについて

 第3章 結論

第3節 ドイツユースホステル運動の現状

 では、ドイツユースホステル運動の現状は、どうなっているのでしょうか?

 それについての解答の詳しい部分は、後に述べるとして、ここでは、ドイツユースホステル協会の基本構造を大雑把に説明したいと思います。これが分からないと、個々のセミナーに関する報告を述べても理解しにくいからです。

 まず、ドイツユースホステル協会本部。本部は、デトモルトにあります。何故デトモルトか?という質問をしたところ、国際部長のザビーネさんは、私が「どうしてベルリンでないのか?」と思ったらしく、このように答えました。

「戦前のドイツユースホステル運動は、ヒトラーユーゲントとして軍事目的に利用されました。そして第二次大戦後に、ドイツユースホステル協会として再出発することになったわけですが、その時にデトモルトのある企業がスポンサーになったのです。そこでデトモルトがドイツユースホステル協会の本部になったのです」
「・・・・」
「やがて東西ドイツが、統一された時、本部をベルリンに持って行くかどうかの議論がおきました。そして州協会で投票を行ったのです。結果は、僅差でデトモルトのままということになりました。理由は2つあります」
「・・・・」
「ドイツでは、単身赴任という習慣がありません。もし、ベルリンに本部が移動となった場合、デトモルトの職員の多くは退職することになります。その場合、多くの退職金が発生し、多額の移転経費がかかります。また、多数の退職者をだすことによって、今まで培われてきた本部のノウハウが消滅することになります。そのリスクを冒してでもベルリンに本部を移転すべきか州協会の投票の結果、デトモルトに本部を残すことが決まったのです」

 この説明に私は、驚愕しました。
 何かが違うと愕然としました。

 1933年までのドイツユースホステル協会本部は、ヒルヘンバッハという地図にも載ってない小さなドイツの田舎にありました。理由は、ドイツユースホステル協会の育ての親でありリヒャルト・シルマンの親友ウィルヘルム・ミュンカーの家が、そこにあったからです。ですからデトモルトに本部があるということは、デトモルトにユースホステル運動の功労者の自宅か何かがあるのか、それともリヒャルト・シルマンと何か所縁があるのか、どちらかと思っていました。しかし、ザビーネさんの説明は、もっと乾いたものでした。

「州協会で投票で本部を決める? いったい、どうしてそんなことが可能なんだ?」

 日本的な発想からすれば、創設者がいて功労者がいる本部ありきであり、州協会は、その下部組織。そう考えるのが普通の発想なのですが、ドイツでは違うらしいのです。州協会が基本単位となって力をもち、本部の存続は州協会が握っていると言わんばかりなのです。このへんは、日本的な発想だとどうしても理解しにくく、私も何度も頭をひねったのですが、ようするにこう言うことです。

 ドイツには、16の州がありますが、これらの16州は、それぞれ独立国家のような臭いがあり、教育に関しては州政府が担当しています。ドイツユースホステル協会も、16州ごとに経営されているのが現状で、本部は各州の調整機関のようなものになっています。
これはユースホステル協会に限らず、あらゆる特殊法人に言えます。当然のことながら、お金を持っているのも、ユースホステルを経営しているのも州協会になります。ですから本部は、州協会に認めてもらうべく、様々な研修プログラムを作ったりしますが、それについては、後述します。

 注目すべき点は、マネージャーおよびスタッフのスキルアップのための教育は、州協会が外注していることです。本部は、最初の1回だけマネージャー研修を行うだけであり、2回目以降は、州協会の方針と判断に任されているために、本部は、他の民間企業との競争に晒されています。そのために本部は、ずいぶんと切磋琢磨しなければ、州協会からマネージャー研修のための仕事がもらえないのが現状です。

「ようするに本部にとって州協会は御客様なのですか?」
「はい、そうです」
「ちょっと待ってください。ますます分からなくなりました。いったいドイツユースホステル協会は、本部と州協会のどちらの力が強いのですか?」

 答えは、人によって違っていました。
 ある人は州協会。
 ある人は本部。
 しかし、回答者の中には、立場上、本部と言わなければ拙い人もいました。あとは雰囲気を推測してください。

 事実として言えることは、州協会は、宿泊数何万の数百ベッドの巨大ユースホステルを何十軒も経営してて、巨大な収入があり、財政が豊かであることです。それに対して本部は、州協会に対して何らかのサービスを行うことによって収益を得なければならないのですが、州協会には選択の自由があり、本部は他の民間企業と厳しい競争を強いられているということです。つまり本部も企業体の形をとっており、州協会は御客様なのです。だから本部をベルリンに置くかどうかを、州協会の投票で決めるという奇妙なことがありえるのです。
このサイトに関するお問い合わせは、北軽井沢ブルーベリーYGHの佐藤まで御連絡ください。

トップへ戻るリンクサイトマップユースホステル利用法ユースホステル研究室ユースホステルヘルパー募集