■日独交流セミナーに参加して
第1章 序論
第2章 本論
第1節 交流のコツ
第2節 ドイツの現状
ドイツの現状1(ネオナチ)
ドイツの現状2(職人国家)
ドイツの現状3(日本の問題)
第3節 ドイツYHの現状
第4節 セミナーについて
第3章 結論
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日本の問題
ドイツのような社会環境に於いては、日本におけるモラトリアム人間やニートのような問題は発生しません。きちんとした職業訓練を完了してないと職につけず、しかも貧困にあえぐことになるのですから、フリーターが発生する余地が無いのです。
ドイツでは失業は即、貧困に繋がります。そして失業は、未熟練労働者や若者から発生していきます。それゆえにネオナチが台頭していく土壌が存在します。ここにドイツの青少年問題の本質があります。
とは言うものの、たったの十日という短期間の視察にくわえて、青少年たちとふれあう機会が無かったために、私には青少年問題を語る資格はありませんが、これだけは言えます。ビーネフェルトの街には、スキンヘッドの若者が多かったこと。東ドイツ(ドレスデンなど)では、殆ど見かけることができなかったこと。
但し、落書きは、何処にいっても見かけることができたこと。深夜にビーネフェルトやドレスデンの街を歩いても全く問題が無いらしく、ドイツの女性が一人歩きしているのを何度も目撃していること。おまけに道に迷っていると、ドイツ人女性が、あきらかに外国人にしか見えない私に対して
「メイアイヘルプユー」
と深夜にもかかわらず、道を教えてくれたことなど、まだまだドイツの治安は良く、国民のモラルは安定しているという印象がありました。
しかし、それもヨーコさんやザビーネさんやヒルデさんに言わせれば、「違う」とのことです。人通りの多い駅で、日本人女性が襲われ、カバンを強盗された話などは掃いて捨てるほどあるとのことで、私などは絶好のカモに見えて仕方ないそうです。ですから私の印象と、実態は違っているのかもしれません。現にネオナチと思われるスキンヘッドドイツの青少年は、西側の田舎町であるビーネフェルトにあふれていました。
さらにヨーコさんは言います。
「二十一世紀を支える産業は、サービス業と先端産業でしょ? これがドイツ人にとって一番苦手な分野なのです」
「どうしてですか?」
「小さい時からプロとして職業訓練を受けているためにつぶしが効かなく、そのために最新技術の導入に遅れがちになります」
「それは分かりますが、サービス業が苦手というのが理解に苦しみます」
「プロとして職業訓練を受けているために、自分流のサービスに誇りを持ちすぎるのです」
「中華思想を持っているということですか?」
「そう言うことです」
このヨーコさんの指摘は、かなり核心を突いていました。職人国家ドイツのもつ中華思想。それは良くも悪くもドイツYH協会のシステムと、ドイツ青少年活動にも重大な影響を与えていたことに後で何度も気がつかされました。それについては後述します。
問題は、そのようなドイツを観察することによって、日本の青少年活動とYH運動の本質が見えてきたことです。
良くも悪くも日本は、プロヘッショナルではなくアマチュア的です。つぶしが効くのです。それゆえにモラトリアム型人間が量産され、ニートと言われる若者たちが増えつつあります。それはネオナチを量産しつつあるドイツの暗部とは質的に全く違っています。
そういう私も、かってはモラトリアム型人間であり、職業をいくつも転々としています。現在は、ユースゲストハウスとペンションの2軒、およびガイド会社やHP会社を経営し、本まで出版していますが、そこに辿り着くまで多くの回り道をしています。典型的なモラトリアム人間でした。
そして日本社会は、回り道を許すアマチュア的な社会でした。そういう意味で母国日本の社会には感謝しています。しかし、もし私がドイツで生まれ育っていたら、どうであったかは疑問です。私はドイツでは落ちこぼれてしまっていたかもしれません。
では、日本社会の方がドイツより良いのかと問われると「?」です。どうしても、どんな職業に就いてもプライドを持って生きていけるドイツ方式が羨ましく見えてしまいます。しかし、そこには日本とは違った諸問題が隠されています。
それにしても、つくづく日独青少年指導者交流事業に参加して良かったと思うのは、ドイツを観見の二つの眼でみることによって、逆に日本の青少年問題の本質を知ることができたことでした。
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