シルマン伝までの経緯2 難航する調査

■リヒャルト・シルマン伝の紹介
  出版の経緯1
  出版の経緯2
  出版の経緯3
  出版の経緯4
  出版の経緯5
■日本ユースホステル協会・推薦文
■群馬県ユースホステル教会・推薦文
■購入方法


シルマン伝までの経緯2 難航する調査

 私は、日本ユースホステル協会の事務所に飛び込み、日本ユースホステル協会にある資料をかたっぱしから借りてコピーしました。また買えるものは全部買いました。『日本ユースホステル運動五十年史』を編纂した磯野氏にも、お話を伺いました。

 また、日本ユースホステル協会の事務局の小俣さんに一九六三年に協会が出版した『ユースホステルの祖父 リヒャルト・シルマン』をホームーページなどに公開して良いかと打診したところ、営利活動でなければかまわないと、好意的な御返事をいただきました。この方もシルマン伝の必要性を感じているのかと思いました。

 さっそく自宅に帰って『ユースホステルの祖父 リヒャルト・シルマン』テキスト文字に変換し、ホームーページに公開しようと思ってみたら、ヨーロッパの歴史的な知識が不足している日本人には、理解しにくい部分があることに気がつき、その作業を中止しました。

この本を復刻出版しても良いのだろうか?

という素朴な疑問が湧いてきたのです。

 この本の著者は、リヒャルト・シルマンについて、ある種の距離を置いているなという雰囲気を漂わせていました。それからドイツ史に対するある種の偏見があるというか、イギリス的な見方があるというか、シルマンの業績について、ドイツ史的な視点立って書かれていないのが、ものすごく気になりました。つまり、イギリス人のフィルターがかかっているのです。それは、ドイツ史に無知な私にも充分に察知できました。

 それから、この本には、日付などの間違いがあったり、著者または訳者の勘違いと思われるところもありました。

 例えば、昭和19年5月にシルマンたちがアルテナ城に結集したのが、ノルマンディー上陸1ヶ月後と書いてありましたが、1ヶ月前の間違い(または誤訳)であることは、多少戦史を知っている者なら誰にでもわかることですが、これを復刻出版したばあい、間違いを直して復刻すべきか、それとも、そのまま出版して、注釈に間違いであることを正すのか、迷いました。前者なら資料の改ざんになるし、後者の場合、読者のポテンシャルに水を差します。

 他にもモンロー・スミスとシルマンが出会った年月を数年も間違えていたり、ドイツの歴史的事情を無視して評価を書いたり、クリスマス休暇事件の背景を無視していたり、プロイセンについてふれてなかったり、ドイツの教育システムについて、最低限のことを抑えてないことに不満がありました。

 そこで、復刻出版を中止し、シルマンについて、もう一度、自分で調べ直すことにしました。しかし、これが、ものすごく難航しました。というのもシルマンに関して日本語に翻訳された資料が極端に少なかったからであり、私自身が、ドイツ語も英語もできなかったからです。

 例えば、シルマンの生まれたハイリゲンバイル郡のグルネンフェルトと言っても、さっぱり分かりません。地図をあたってみても場所が特定できないのです。というのも、その土地は、東プロイセンからポーランド領になっており、現在はポーランド名に変更されているからです。

 こんなことも語学ができないために調べ上げるのに何日もかかりました。ようやく位置を確認し、やっとシルマンの生まれた土地が、内陸なのか、海のそばなのか、平均気温は何度なのかということが分かりました。
 それからシルマンが生きた時代のプロイセンの文化や民俗、そして教育制度も、ある程度理解するまで時間がかかりました。

 とにかく資料がありませんでした。最初は、あたりをつけてインターネット書店で購入しましたが、これでは駄目だと観念して、北軽井沢から東京に上京し、財布と相談しながらかたっぱしから買い集めました。絶版になった本は古本屋にたのむか、国会図書館に日参してコピーをとり続けました。

 インターネットによる調査も難航しました。ドイツの人名・地名は、マイナーすぎて検索に出てきません。時間がとれたら私が、ドイツ関連の資料を整理してホームーページに公開したいと思ったくらいです。幸いなことに私は昔、ドイツを旅したことがありましたので、その時の記憶だけがたよりでした。


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